坂の上の網 | 2009年01月11日 |
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昨年の暮,来日したシモン・ボリバル・ユースオーケストラ・オブ・ベネズエラ(Simon Bolivar Youth Orchestra of Venezuela)のコンサートに行きました。創設者のホセ・アントニオ・アブレウ博士の"貧しくても音楽を学びたい子供たちに、わけ隔てなく楽器を与え集団で練習することで団結と規律の精神を養い、若い演奏家を育て演奏の場を作る。"という理念のもと、音楽教育のエル・システマはベネズエラにしっかりと根付き豊かに実ったようです。若者たちの演奏技術も一流ですが、音楽の楽しさを伝えようとする 気持ちが、彼らの目の輝きとともに伝わって来て感動しました。この若者達の生き生きとした表情を見て、ふと司馬遼太郎の「坂の上の雲」を思い出しました。この小説に描かれている若者たちは、新しい国家を作るために時代を駆け抜けて行きましたが、彼らが活躍した時代、坂の上には青空にポッカリ浮かぶ白い雲を見ることができる社会の雰囲気があったのでしょうね。維新から140年を経過した現代、新国家の形成と発展のために張り巡らされて来た様々な制度やしきたりの網は、平成の坂の上に重くのしかかっているようです。その中には、これからの社会を築いてゆくのに役割を終えた制度やしきたりの網が無数にあるようです。
京王井の頭線の渋谷駅改札口前には、岡本太郎作のとてつもなく大きな壁画「明日の神話」があります。岡本画伯がメキシコで制作されたものだそうですが、一人でこの大作をお描きになったとは、まさに"芸術は爆発だ!"の気迫が迫ってきます。この絵を見て我々も岡本画伯の元気をいただき、青年諸君から中年、壮年の皆さんまでが連携して、今の社会を覆っている役割を終えた様々な網を整理して、次代の若者たちが再び坂の上の青空に浮かぶ雲が眺められる社会を作ろうではありませんか!
コンサートが終わり席を立つときに、私の後ろの席で演奏を聴かれていたアブレウ博士にBravo!と声をかけたところ、にっこりと笑いながら会釈して下さいました。(当日の演奏会の模様は2月20日の夜、NHK教育テレビで放送されるそうです。是非ご覧ください!)