三佐和ブログ


ブラウンルーフ 2010年03月14日

「欧州における屋上緑化」長瀬彩子さん(千葉大学園芸学部)の講義を受講してきました。(緑と水の市民カレッジ:サテライト講座2009)。スイス、イギリス、ドイツ、スエーデンの屋上緑化事情を写真を交えてわかりやすくご講義いただきましたが、そのなかで、スイスのブラウンルーフについて学ぶところがありました。屋上緑化と言いますと、緑のカーペット、グリーンルーフにこだわってしまいますが、屋上緑化には緑化スペースの普及と同じように「生物多様性・生態系の創出」という役割があるという話にとても深い印象を受けました。

 

IMG_3410.JPG スイスのバーゼル市内では、ライン川の川岸や空き地が、クモ類や甲虫類、その他の生物にとっての貴重な生息地でしたが、開発によりその空き地が減少傾向にあるようです。この問題を解決する一手段として「屋上に河川と似た環境をデザインして植物を育て、生物が生息できる環境を作り出す」。このようにして出来た生物の生息地をブラウンルーフと呼びます。

IMG_3254.JPG年間を通しての降雨量や気温などの自然環境が ヨーロッパの国々とは異なる日本では、屋上で生息する植物や、動物、昆虫などの生態系も違いますの恵み)。しかしながら、「屋上で多様な生物が共存できるような植栽デザインを工夫することが重要である。」という話は大いに参考になりました。屋上向けの植栽デザインとは、「培地の厚さを一定にせず、異なる培地の厚さを取り入れ、植物の構成に様々な階層を持たせ、植物を植えないオープンスペースを作ること」です。

 

IMG_3255.JPG イギリスでもロンドンを流れるテムズ川流域の開発が進み、そこに生息するクロジョウビダキをはじめとする鳥や昆虫等のための、多様な生息地を屋上に求めているようです。川辺の環境を都市の屋上に作り生物の生息地を守る発想は、大いに学ぶと所があります。グリーンルーフが人間の心を癒す場所であるのに対して、ブラウンルーフは生物が生息するための場所ですね。


TOP