ドロミーティ | 2010年10月17日 |
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先日TVでイタリアのチロル地方にある世界遺産、ドロミーティが紹介されていました。東アルプスに属する山群で、その昔アフリカプレートがヨーロッパ側のユーラシアプレートにぶつかり、海底が隆起してできた山々です。インド・オーストラリアプレートがユーラシアプレートを押し上げて、ヒマラヤ山脈を形成したのと同じ原理で、地球活動のスケールの大きさを感じさせます。
海底が隆起してできた石灰層の主成分は、貝殻やサンゴなど海で棲息する生物が積み重なってできた石灰(炭酸カルシウムCaCo3)ですが、ドロミーティを形成している石灰はちょっと違います。海が隆起したドロミーティでは、石灰層を形成する過程で海水に含まれているマグネシウムが炭酸カルシウムと反応してドロマイト(苦石灰)CaMg(CO3)2 という、炭酸カルシウムよりも硬い石灰層が形成されました。ちなみにドロミーティの名前は、この石灰よりも硬い苦石灰(ドロマイト)を発見したフランスの地質学者ドロミューの名前に由来するようです。 ドロマイト
同じくイタリアはナポリ周辺の海辺の町ポゾリ(Pozzuoli)では、ヴェスヴィオ火山から噴出した火山灰を炭酸カルシウムを焼成・水和した水酸化カルシウムに加える事で、石灰よりも強度の強いローマンセメントが作られました。(CaH2SiO4)火山灰に含まれているシリカSiやアルミナAlが水酸化カルシウムと反応して強度が水酸化カルシウムよりも高くなる現象・ポゾラン反応ですね。 ポゾリの火山灰
ドロマイト、ローマンセメント、そして現代使用されている様々なセメントにはある共通点があります。それは地殻を構成するシリカ、アルミナ、鉄、マグネシウム、ナトリウム等を石灰(炭酸カルシウム)に加えることで石灰の強度を高めることです。石灰のもとになる炭酸カルシウムも地殻を構成する元素のひとつカルシウムが、生物の中で炭素と反応して作り出されます。生物が作り出した炭酸カルシウムと地殻を構成する元素が結びつくことで、石灰より強く耐候性の高い様々なセメントが作り出されます。セメントの故郷である古代ローマ・ギリシアの文明には、現代文明に役立つ大きなヒントがまだ隠されているような気がします。 ミケーネの獅子門
参考ブログ: ローマンセメント ヒトは西からホネは東から Pozzuoli Romacon&Bumicon ルネサンス ブミコンとベンガラ 写真引用 Wikipedia