三佐和ブログ


次世代エネルギーの柱 2012年07月14日
先週ご紹介した物理学者中谷宇吉郎の「 原子爆弾雑話 」は終戦直後の昭和20年10月に文芸春秋に掲載された随筆です。原子爆弾が投下されてわずか2カ月足らずの間に書かれた文章ですが、 当時の 原子力の開発に関する日米比較、原子力エネルギーの構造などを一般人向けにわかりやすく書かれた内容で、発表から67年を経た今読んでも 著者の 原子力に関する洞察は色あせません。「火薬は化合物の分子の結合の際に出るエネルギー、爆薬は化合物の分子が破壊するときのエネルギー、そして原子爆弾は分子を構成する原子の崩壊によるエネルギーである。」そして原子の崩壊については「われわれの地球上ではその創生以来堅く物質の究極の中に秘められていた恐るべき力を、とうとう人間が解放したのである。開けてはいけない箱の蓋を開けてしまったのである。これは人類滅亡の第一歩を踏み出したことになるおそれが十分にある。」と述べられています。
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先日、電力中央研究所の方の講演会に参加したのですが、原子炉開発の歴史の話を聞いて民生用原子力発電所(軽水炉)、原子力潜水艦や航空母艦用の舶用炉、そして核兵器の開発に伴う技術とその統御システムはリンクしていて、原子力発電所の民生利用だけを切り離しては考えられないという印象を受けました。今回の福島の原子力発電所を襲った地震・津波被害とその後の経過を見て、原子力の平和利用とは人間の考えた方便ではないかと思いました。中谷先生のおっしゃるように原子を崩壊させるという事で、人類は自然法則の開けてはいけない箱の蓋を開けてしまったのです。
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原子力が開発利用されてすでに70年以上の年月が経過しています。その間に2度の大きな被爆体験した日本はこれからは当分の間、火力発電を始め様々な自然エネルギーのリリーフを仰ぎながらも原子力に代わる新たなエネルギーの柱を造り上げて行かなければなりません。開国以来150年、西洋の文明を学びながら様々な科学的発想と技術を日本社会は蓄積してきました。これからはこれらの経験を踏まえ日本の風土と自然に最も適したmade in Japan オリジナルのエネルギーの製造供給システムの確立を目指したいですね。写真 新宿御苑と芙蓉の花 7月13日撮影   関連ブログ:ホーム&アウェイ


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